俺は47歳。転職を30回くり返し、自己破産をして、今は生活保護を受けている。糖尿病と狭心症も持っている。完璧という言葉から、たぶん一番遠いところにいる人間です。
前回(Day 33)で、海のそばの新聞配達を短期で辞めた話を書きました。その続きです。
まず結論から言います。新聞配達を辞めたあと、リヤカーで食べ物を売る訪問販売の仕事に就きました。売れなければ収入はゼロ。毎日10kmくらい歩いて売り歩く日々でした。そんな中で、俺は狭心症で倒れ、手術をしました。今振り返ると、働き方も生活も体も崩れていった根っこにあったのは、お金と心の余裕のなさだったと思っています。
Day 33の続き――リヤカーで食べ物を売る訪問販売の仕事に就いた
海のそばの新聞配達を辞めたあと、次に就いたのが、リヤカーに食べ物を積んで売り歩く訪問販売の仕事でした。クリームパンやバームクーヘン、菓子類なんかを積んで、企業や個人宅を回っていく。そういう仕事です。
3〜4人で車に乗って営業地域まで移動して、現地に着いたら、そこからは一人でリヤカーを引いて回る。どこの地域を回るかは上の人が決めていて、山奥のこともあれば、街なかのこともありました。とにかく、その日その日を売り歩く日々の始まりでした。
毎日10km、天候に関係なく――フルコミッションの日々
毎日、リヤカーを引いて10kmくらいは歩いていたと思います。しかも、天候に関係なく。雨でも雪でも、暑くても寒くても、外に出て売り歩く。これがなかなかこたえました。
そして、この仕事はフルコミッションでした。つまり、売れなければ収入はゼロ。どれだけ歩いても、売れなければ、その日の稼ぎはありません。歩いた距離ではなく、売れた分だけが自分の収入になる。そういう働き方でした。
売れなきゃ収入ゼロ――焦るほど、余計に売れなくなった
フルコミッションのきついところは、体力だけじゃありませんでした。心のほうです。
売れないと収入がない。だから焦る。でも、不思議なもので、焦れば焦るほど、余計に売れなくなるんです。不安な気持ちは、たぶん相手にも伝わる。だから、この仕事はメンタルのコントロールがすごく大事でした。でも当時の俺には、その余裕がありませんでした。お金がないから焦る、焦るから売れない、売れないからまたお金がない。その繰り返しの中にいました。
男数人での共同生活――お金の余裕がないと、心の余裕もなくなる
この時期は、男が数人集まって、一軒家で共同生活をしていました。相部屋の人も多く、俺は運よく一人部屋でしたが、それでも共同生活であることに変わりはありません。
ここに来た時点で、俺にはもうお金がありませんでした。生活のために借金もしていました。お金の余裕がないと、心の余裕もどんどんなくなっていく。当時、身の回りのお金のことでも神経をすり減らしていて、「貴重品はちゃんと自分で管理しないといけない」と痛感する出来事もありました。細かいことは書きませんが、余裕のなさというのは、そういう小さなところにも影を落とすものだと思います。
食生活も心も荒れていった――そして胸の苦しさが限界に
お金も心も余裕がないと、食生活も荒れていきました。朝はパンやレッドブル、昼はほとんど食べず、夜は揚げ物中心。休みの日は缶ビールと揚げ物のつまみ。今思えば、体にいいわけがない食生活です。
でも、当時の俺は「悪いものを食べたい」という気持ちのほうが強かった。問題は食事の中身そのものより、そういうものを求めてしまうメンタルと、荒れた生活習慣のほうにあったんだと思います。そして実は、この頃すでに、胸の苦しさを感じていました。歩いていて、信号待ちくらいで少し回復するような、そういう苦しさです。それでも、立ち止まって病院に行く余裕さえ、当時の俺にはありませんでした。
狭心症で手術・入院――体が出したサインだった
結局、その胸の苦しさは、我慢できるものではありませんでした。2020年の12月ごろ、俺は狭心症で手術をすることになり、1週間ほど入院しました。
大げさに「死にかけた」と書くつもりはありません。ただ、あとから思えば、これは体が出したサインだったんだと思います。お金がなくて、心に余裕がなくて、食生活も荒れて、無理な働き方を続けていた。その全部の土台が崩れていたことが、体という一番正直なところに、はっきり出てしまった。そういう出来事でした。
手術のあとも、生活はよくならなかった
正直に書きます。手術をして退院したあと、生活がよくなったかというと、そうではありませんでした。むしろ、手術後のほうが、食生活もメンタルも悪化していったくらいです。
体にメスを入れれば生活が変わる、というものではなかった。根っこにあるお金と心の余裕のなさが、手術で消えるわけではないからです。結局、その後もしばらくは、悪循環の中で暮らしていました。体を治すことと、土台を立て直すことは、別の話だったんだと思います。
すぐ辞める癖と、続けられなかった働き方
この訪問販売の仕事も、結局は続きませんでした。これまでにも、すぐ辞める癖については何度も書いてきました(Day 8)。
前回(Day 33)の新聞配達では、生活リズムが整わない働き方は続かない、と気づきました。今回の訪問販売では、それに加えて、お金と心の余裕がない状態では、どんな働き方も長くは続けられない、ということが分かりました。続かなかったのは、根性が足りなかったからではなく、続けられるだけの土台が、そもそもなかったんです。
振り返り――崩れの根っこは、余裕のなさだった
あらためて振り返ると、この時期に働き方も生活も体も崩れていった根っこには、お金と心の余裕のなさがありました。
| 出来事 | 当時の見方 | 今の見方 |
|---|---|---|
| 焦るほど売れなかった | 自分に営業の才能がない | 心に余裕がないと結果も出にくい |
| お金の余裕がなかった | 自分の稼ぐ力が足りない | 土台が崩れていた根本原因 |
| 食生活が荒れていった | 意志が弱い | 心の余裕のなさの表れ |
| 胸の苦しさを我慢し続けた | まだ大丈夫だと思った | 立ち止まる余裕さえなかった |
| 狭心症で手術になった | ただの不運・体の弱さ | 土台の崩れが体に出たサイン |
| 手術後も改善しなかった | 自分がだらしない | 根っこの余裕のなさが残っていた |
働き方も生活も体調も崩れていったのは、根性や能力が足りなかったからではなく、お金と心の余裕という土台がなかっただけかもしれません。余裕のなさが先にあって、そこからすべてが崩れていく。順番が逆だったんです。だからまず立て直すべきは、根性でも能力でもなく、その土台のほうだった。今はそう思っています。
自分史と『考え方』の読み方ガイド
余裕のない働き方・生活で、心や体をすり減らしている人へ
▶ すぐ辞める癖の話(Day 8)
▶ 生活リズムが整わない仕事の話(Day 33)
▶ 仕事の向き不向きの話(Day 32)
▶ 居場所を選び直した話(Day 31)
▶ 考え方の土台(Day 1)
前の話・これまでの流れを読みたい人へ
▶ 前回:Day 33から読む


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